発熱体の故障形態は限られています。抵抗線の断線、絶縁低下、シースの腐食・穿孔、端子の酸化です。これらが突然起こることはまれで、取付条件や運転条件が時間をかけて設計値からずれた結果として現れます。
1. 素子が液面から出ていなかったか
液中ヒーターの素子は、液体に熱を奪ってもらうことで成り立っています。液面が下がると上部が露出し、その部分の表面温度はたちまち数百度に達して MgO 絶縁が破綻し、絶縁破壊に至ります。
対策は「液面を見ておく」だけでは足りません。加熱回路とインターロックした低液面スイッチを付けるか、素子の上端が最低液面より 100 mm 下になるまで下げます。液面変動の大きいタンクでは、ドラフトチューブも有効です。
2. 表面負荷が高すぎなかったか
同じ電力なら、素子の表面積が小さいほど表面負荷は上がります。水は 6–8 W/cm² に耐えますが、油は 2–4 W/cm² まで、高粘度の媒体ではさらに低くなります。
表面負荷が過大だと、油が管壁でコーキングし、コークス層が壁温度を押し上げ、最後は局部的なホットスポットで抵抗線が焼き切れます。分解してもシースに目立った腐食が見られないことが多いものの、内部の線は溶け、MgO は変色しています。
3. 取付すきまと接触
カートリッジヒーターでは、取付穴との嵌合すきまを 0.05–0.1 mm にします。大きすぎると熱抵抗が増して素子が金型より数十度高くなり、小さすぎると取り外しの際にシースに傷が付きます。
バンドヒーターも同じです。内径公差とボルトの締付トルクが接触に影響します。すきまゲージで全周を確認する、あるいは熱伝導グリースを塗るといった対策が効果的です。
4. 端子周囲の温度
素子本体は 600°C に耐えても、端子は通常 150–200°C までです。端子箱が高温の機器に接していたり、冷端が短すぎたりすると、端子の酸化が進んで接触抵抗が上がり、やがて過熱して焼けます。
選定時に冷端の長さを確認しておきます。現場ではサーマルパッドを足す、端子箱を延長する、端子箱を熱源から遠ざけるといった方法が取れます。
5. 開閉頻度と熱衝撃
頻繁なオンオフは、素子に膨張と収縮を繰り返させます。シースと MgO では膨張係数が異なるため、長期間の繰り返しで内部にすきまができ、伝熱が悪化して局部過熱につながります。
頻繁な調整が必要な工程では、熱衝撃を抑えるため接触器の開閉ではなく SCR 連続制御を使います。大型ヒーターでは、全体を一括で発停するよりグループごとの開閉の方が負担が小さくなります。
交換時の二つの注意
新しい素子を付ける前に、古い素子がなぜ壊れたかを突き止めます。原因がコーキングなら、系内を洗浄せずに交換しても、新しい素子も同じ短寿命に終わります。
また複数素子のヒーターでは、故障した 1 本だけではなくグループ全数を交換します。古い素子と新しい素子では抵抗値が違うため、古い方に多くの電流が流れ、ほどなく同じように故障します。
発熱体の寿命は、設計・取付・運転が一体になって決まります。以上の点を一通り確認すれば、初期故障の大半は防げます。